1.レッスン
今日はレッスンがあった。実は前回に一度だけあったのだが、そのときにはトレーニングゲームを行い、今日はそのゲームの分析ということになった。 レッスンの内容としては、特に不満がなかったが、いかんせんレッスンのテンポが遅すぎたので若干イライラした。 レッスンの最後に、今日のレッスンは勉強になるところも多かったけれどちょっとテンポが遅すぎる、ダラダラやってもあまり意味を感じないし時間の無駄に感じる、次はもっとテンポよくやってほしい、と要望を出したら、次からはもっと早くやるということになった。 ゆっくりやった方がわかりやすいという意図だったみたいのだけれど、ダラダラやっているようじゃ何のためにレッスンを受けているのかわからない。
2.チェスプラン
前回の記事でこれからのチェス学習をどのようにすべきかについての自分の考えを書くといったので、以下で述べる。 ポイントは、できるだけ要素に分けて強化すること、無駄を減らすこと、にある。
(1)タクティクス
ア 総論
一般的にレーティング1500未満あたりのプレイヤーがなすべきこととして最も強調されるのはタクティクスの学習だ。例えば、その極北として、Michael De La Maza(DLM)の方法がある。DLMは、その著書Rapid Chess Improvementの中でタクティクス至上主義の学習方法を提案する。主張としては単純で、「私はタクティクスの学習『だけ』でUSCFレーティング2000まで行きました。ストラテジーなんて勉強する必要ありません。」という本だ。その方法としては、Convekta(ChessOK)から発売されているタクティクスが約1000問収録されているソフトCT-ART 3.0(現在は、4.0)を7週やったというものだ。
この方法は単純で、それゆえに魅力的で追従者たちも多かったようだ。しかし、実際には、MDLMと同じような急成長を遂げた人は現れなかったようだし、批判も多い。(追記:http://empiricalrabbit.blogspot.jp/2012/06/michael-de-la-maza-verdict.html この記事の中で、MDLMの記録はおかしい、コンピューターを使ったチートをしていた疑いがある、と書かれている。確かに怪しい・・・)
ただ、一般的に言って、これほど極端な形を取らずとも、タクティクスの学習が重要であるということは、確かだろう。実際、マスターのゲームですら多くのゲームが結局はタクティカル・エラーで勝敗が決せられることが多く、それ以下のレベルのゲームだったら、ほとんど全てが結果的にはブランダーによって勝敗が決せられる。
一般に、タクティクスが決まれば、後は自分がミスさえなければ勝つことができる。 ポーン一個をとれただけでも、それを最後まで維持できれば勝つ可能性は非常に高くなる。ピース得すれば、なおさらだ。
タクティクスにはアタックの側面もあるが、ディフェンスの側面もある。Dan Heismanは、A guide to Chess Improvementの中で、このことを強調する。そして、概して、初心者は、タダ取りであったり、タクティクスに対して脆弱であったりと、安全面が非常に弱いと指摘する。確かに、自分の番でタクティクスを見逃しても負けは確定しないが、相手に決められたらたいてい終わってしまう。
以上からしても、勝敗がタクティクスで決せられるのが現実である以上、タクティクスの学習は必須だいうことは明らかだ。
イ パターン認識
具体的な学習方法としては、ひたすら問題を解きまくる、難しい問題を解く、などいろいろな方法があ るだろうが、私が一番納得できるのは、基礎的なタクティクスのパターンをできるだけストックするというものだ。 これはアタックの側面よりも、ディフェンスの側面においてより資すると思う。要するに、ブランダーをしないという点に主眼がある。
実際、多くのゲームにおいて、非常に単純なタクティクスの見落としで勝敗が決せられる。 10手のコンビネーションで勝負が決まりましたなんていうゲームは、少なくとも私のレベルではほとんどない。反対に、初学者の段階で難しい問題を解いても効果は薄いのではないかと思う。
そういう意味で、最初は基礎的なタクティクスをパターンとして覚えてしまう、ということが重要なのではないか。 簡単なタクティクスの問題集を、ほとんど覚えてしまうというレベルまでやりこむということが一番単純で効果的な方法に思える。 そのためには反復練習が必要で、この意味においてはMDLMの方法論も合理的だと思う。 例えば、Dan Heismanは簡単なタクティクスの問題集を各問10秒以内で解けるぐらいになるまでやるべきだと主張する。 もっと突き詰めた方法でやっている例としては、Empirical Rabbitの一連の「実験」が興味深い。
初歩的タクティクスのパターン認識強化用のためには、大体以下の順序でタクティクスの問題をこなしていこうかと考えている。
Chess Tactics for Students
The Chess Tactics Workbook
Chess Tactics for Champions
Back to Basics : Tactics
Learn Chess Tactics
ウ 高度なタクティクス・コンビネーションの学習
これらの基礎的なパターンをストックできたら、はじめて難しい問題の演習も行うべきなのではないかと思う。 そして、仮にそういった問題演習を行うにしても、できるだけ思考を体系化したい。 闇雲に読むというのではなく、どういった条件でこのタクティクスは発生しやすいのか、といったことを分析して理解できた方が高度のタクティクスも解きやすいと思うからだ。
この点について、Understand Chess Tacticsは興味深い。 大体一読はしたが(私が持っているのは旧版)、fork, discovered attack, removing the guardといったタクティクスについて、どのように考えるべきか、どのようにすれば発見しやすくなるのか、といったことについての分析が述べられている。 この本の著者自身、25歳でチェスをはじめてFMになったという経歴を有している。
このように、強制手順をより深く読んでいくという学習は、簡単なパターン認識に特化した学習とは別立てして学習するのが合理的ではないかと思う。
(2)ストラテジー
ア パターン認識の重要性
ストラテジーの学習に関しては、正直なところ、自分がほとんどわからない分野であるため自信はあまりない。 しかし、ストラテジーの領域に関しても、パターン認識を中心とした学習が一番効率が良いのではないかと思う。
パッハマンのストラテジーの本の目次なんかを見ると、ストラテジーの要素がずらっと並べてある。確かに、総論的にストラテジーの理論を学習することは重要だろうし、学習しなければならないと思う。 概念と把握していれば、実戦で使える思考のツールとなるからだ。 しかし、一般的に学習全般に言えることだが、大理論を把握していたとしても、それを実際にどのように適用するのかという、理論と自分の技術の架橋ができなければ、効果は薄い。 Principle of two weaknesses, weak colors, opposite color bishops, なんて言葉では知っていても、それを実戦で使えなければ意味が無い。
この架橋、すなわち、理論の実戦の場における適用例を学ぶという意味で、パターン認識の学習は必須なのではないだろうか。 具体的には、マスターのゲームによる棋譜集を参考にするという形をとる。 そして、仮にパターン認識に特化して学習するとなれば、単に棋譜を並べるだけでなく、各ゲームの、ストラテジー的に重要なクリティカル・モーメントをポジションとして保存していくという形をとるのが理想的ではないかと思う。
そして、これをタクティクスの学習と同じように、反復してパターンとして覚えてしまう。 Fritz又はChessbaseにポジションをわかりやすい方法で保存するという方法を私は考えている。 Chessbaseだと、Chessbase社の電子書籍のように、ソフト上でノートも作れる。
こういった方法については、完全に同じ趣旨ではないかもしれないが、Studying Chess Made Easyにおいても述べられている。また、ポルガー姉妹の父親著のMiddlegamesなどもその副産物のように思われる。 さらに、棋譜を学習する意義はパターン認識にあるということは、IM Jeremy Silmanも同様のことを述べている。(追記:Improve your Chess Nowにおいても、ほとんど同じ学習方法を推奨していた。)
イ 具体的方法
以上から、ストラテジーを学習するにあたっては、①ストラテジーの要素の概念の把握②パターン認識ということを意識してやるべきなのではないだろうかと思う。 そして、②を重点的に意識して行う。漫然と棋譜を並べるのではなく、目的を明確化する。 ポジションストックもしておけば、仮に学習時間が少なくとも、後から復習もしやすい。
①については、Modern Chess Strategy, Simple Chessなどが良いかと思っている。 ②については、棋譜集というのは大量にあるから好みになるだろう。 例えば、Dan Heismanのページでは、オススメの本が掲載されているから、参考になるかもしれない。
(3)オープニング
初学者のオープニング学習の意義については、考えるところを以前述べたので省略する。しかしながら、たとえオープニングは極力勉強しないとしても、全くやらないのも問題なのではないかと思う。 具体的には、ずっと明らかにミスの手順を每ゲーム繰り返すなんていうのはナンセンスだろう。 したがって、オープニングの矯正にとどまるレベルであれば、オープニング学習も意義があると思う。
具体的には、ゲームの見直しの際に、オープニングについても変な手を打っているならば、それを本等を参照して、その度に修正する。 このためにも、自分がプレイするオープニングの本はそろえておいて、ゲーム毎に個別に参照していくのは良いだろう。こうすれば、自分の実力に応じて、徐々にオープニングも向上するのではないかと思う。
(4)自分のゲームの見直し
ゲーム分析も、多くのプレイヤー・コーチにその重要性が指摘されている。 私が考えるゲームの見直しの方法は以前に述べたので省略する。しかし、ゲーム分析にしても、実際にそのゲームから学んだことを次にいかせなければ意味がない。 その意味で、個別にノートなどをつくって、各ゲームから学んだことを記していく、そしてそれを定期的にチェックしていくということぐらいのことはしても良いかもしれないと思う。
(5)終わりに
ざっと書いてみて、今まで書いたことと重複することばかりになったが、整理するとこのような感じになる。 具体的な学習時間としては、タクティクス>ゲーム分析>ストラテジー>オープニング、ということになるだろうか。 やはり、タクティクスが最優先課題であろうことは変わらないからだ。
いずれの学習にしても、タクティクス・ストラテジーにおいてはパターン認識がメイン、というように、後に「残る」を念頭に置いている。 本を読んだのに、結局全て忘れて何も残らなかった、というような学習は避けたい。 単なる時間の無駄だからだ。 パターン認識を主眼として学習を行えば、そういった無駄をできるだけ少なくできるのではないかと思う。
参考資料
学習プランを考える上で、本文中に述べた以外のもので参考にしたもの及び有益と思ったもの。
Internet Chess Learning Centre
GMによる、若干うさんくさいチェス通信教育のサイトだが、学習方法指南の項は示唆的。
Tom Rowan's Articles
Tom Rowanなるチェスコーチによる、雑誌寄稿記事の抜粋。マスターのゲームの学習方法についての考えが示されており、興味深い。
The Cognitive Psychology of Chess
認知心理学からのチェスの分析についての簡単な啓蒙記事
The Path to Improvement
ChessVilleにある、初心者向けの、学習方法指南記事。
What is more important, the strategy or the tactics?
Modern methods for training a chess player.
一時、Convektaのソフトで学習プランを立てようかと思っていたときに参考にした記事。ロシア人トレーナーによる、Convektaのプログラムを使ったGM養成の過程を述べた記事。
Moving up the Ladder: A Class Player on Gaining 200 Rating Points
半年でレーティングを1700→1900と向上させた人の体験談。
Analyzing Chess Games
自分のゲームの分析方法についての考え。
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