2012年5月29日火曜日

ミスを減らすために 1

chess.comでStandard 15m10sをやっていると、レーティングが1450ぐらいまでは頻繁に行くが、それ以上は伸びない。結局、1400~1450あたりをさまよっている。 レーティングもうまくできているものだと思う。 振れ幅としてある程度はいったりきたりしても、自分の実力の限界あたりまで来たらそれ以上は上昇しない(偶然によって瞬間的に上昇する場合もたまにあるが)。 そして、「君はこのレーティングあたりの連中と同じぐらいの実力です」と宣告されているかのように、ある程度のレーティングで落ち着く。

 私の場合でいえば、「お前は1400ぐらい」とchess.comに宣告されて、1400付近の実力ということなのだろう。 とはいえ、1400付近でそのまま何の上達もなくそこで終了というのも嫌である。できれば、早くこのレーティングレンジからおさらばしたいものである。 そのためには、何が私を1400程度にたらしめているのかということを理解する必要がある。そして、あわよくばそれを改善できれば良い。

 自分のゲームの棋譜をFritzにぶちこんで一番最初に気付くことは、ほぼ全てのゲームがBlunderによって終了しているということだ。Blunderとは、あえて定義したら、駒落ちしてしまう手を打ってしまうこと、となるかもしれない。 駒落ちする場合とは、タダ取りされる手を打つ、相手のタクティクス・コンビネーションに気づかずそれを実行されてしまう(タクティクスの結果としてタダ取りされる)、という二通りがあるだろう。

 そして、結局1400程度にとどまっている理由というのは、毎回のゲームで何らの反省もなく「うっかりミス」という名のBlunderをしまくっているという点にあると思う。 ストラテジーの知識が乏しいということは、副次的要因であっても、主要因ではない。

 したがって、一番最初の方の記事でも書いたが、とにかくBlunderを減らせば、だいぶマシになるということは確実だ。 では、どうすればBlunderを減らせるか。 はじめてレッスンを受けたウクライナIMに聞いたら「集中しろ!」なんて言われたが、集中しろと言われても、初心者には何に集中したら良いのかわからない(わからなかった)。

 それからいろいろ調べたが、ミス(blunder)をいかに減らすかという点については、いくつかの本に記述がある。 具体的には、Secrets of a GrandpatzerA guide to Chess ImprovementThe Search for Chess Perfectionが参考になった。(Purdyの本は、amazonでは高いが、たまにネットの古本屋で安いものが存在する。運が良ければ、安く買える。Bookfinder等の横断検索を使えば良いかもしれない。)

 結局、いずれの本においても述べられていることは、ミスをしないためにはそのための思考方法を確立する必要があるということだ。思考方法が自分の中で確立していれば、何に注目し・集中すれば良いのかが明らかになる。

参考までに、それぞれの本に書いてあることを要約すると以下のようになる。 

(1)Secrets of a Grandpatzer - Kenneth Markcolby
 自分の手番においてまず最初に考えるべきことは「相手が与えている脅威(threat)は何か」ということを確認することである。 具体的には、以下のように行う。

 まず、自分の手番において、自分ではなくあたかも相手の手番であるかのように考える。そして、仮に現在相手の手番であれば、どのような手を打ち、どのような脅威を与えることができるか確認する その際、チェック、キャプチャー、フォーク、ディスカバードアタック、スキュアー…等のタクティクス・コンビネーションが発生する可能性がある手は入念にチェックする。
 
 以上の検討を前提に、脅威が存在するのであれば、次に、その脅威にどのように対処すべきかということを考える。すぐに守る手を考えてはいけない。一見脅威に見えても、無視できること、あるいは、こちらからカウンターアタックを仕掛けれられる可能性があるからだ。
 当該脅威に対する対処方法を考えた後に、手の検討を行う。 もっとも、最終的に自らが打つ手を選択しても、すぐに打ってはいけない。 その手によって新たな自分にとっての脅威が生まれないか、blunderとならないかを上記手順と同様に入念にチェックする。 そして、はじめて手を打つべきである。

 以上のように、この本においては、脅威は何か、というチェックを二段階にわける。 ①現ポジションにおける脅威の確認②手を打った後の局面における脅威の確認、というように。また、自分の手番であっても、相手の手番であるかのように考えるという点において、ミス削減を徹底する。

(2)A guide to chess improvement - Dan Heisman
こちらの本では、ミスを失くすというよりも、より広く手の選択方法について述べられている。これについては、以前まとめたので、それをそのまま貼り付ける(自分用に書いたのでわかりにくいが)。


    相手の脅威の確認。特に、forcing movesの検討。
    相手のとりうるプランの確認。 自分のプランの確認。
    無条件にforcing movesはまず最初に全て検討。
    ③でタクティクス等がなければ、自分のプランを達成させる手を「全て」チェック。なければ、相手のプランを阻害する手を全てチェック。(Initial Candidate Moves)
    ④における手を、安全か(blunderに至らないか)どうかという観点から、剪定する。
    ⑤において残った手の中から、最終ポジションの比較によって最も優れているものを選ぶ。(Final Candidate Moves)


 (1)と似たようなものである。 ただ、candidate moves(候補手)の選択方法については、示唆的な記述があった。 すなわち、candidate movesをリストアップして、比較し最終的に手を選択する場合、何を比較するのかという点である。 candidate movesの比較といえば、"moves"とあることから、手そのものを比較検討すべきであるかのように思える。しかし、検討すべきは、当該candidate movesから最終的に至るポジションであるということを強調する。 
 当たり前の話といえば当たり前の話だ。しかし、なるほどと思わされた。手そのものを比較しても、何も見えてこない。 そして、逆に言えば、ポジションを評価してそれを比較するというのであれば、ポジションを正確に評価(evaluation)する能力が必要となる。 各候補手から至るポジションを評価し、それを比較する。 この作業を自信をもっておこなえるようになるには、ポジショナル・ストラテジーに関する豊富な知識が必要だろう。 そもそもそういった知識を欠いていれば、ポジションを評価するという行為自体ができないからだ。


(3)The Search for Chess Perfection - C.J.S. Purdy
 これについても、先日まとめたので、そのまま貼り付け。 なお、Purdyは自らのミスを減らすための思考方法にを"The System"と称している。


      指すべきことが明らかな手はないか?(キャプチャー等)
      手が極端に絞られており、そもそもシステムを用いる必要がないか検討。
→①・②の場合は、以下の手順を検討するのは時間の無駄。
      脅威は何か?(複数個ありうる) また、相手の手は局面に何をもたらしたのか?
      どちらが優位にあるのか?そして、どの点において優位性が存在するのか?
→⑤へ
      調査(reconnaissance)を行う(ポジショナル・ファクターの検討)
      コンビネーション(タクティクス)はないか? forcing movesは全て検討する。
      コンビネーションが存在しない場合、プランを立てる。
      Candidate Movesの検討



 まあ、結局(1)(2)とあまり変わらない。ただ、書き方としては、上記2つの本よりもこの本が一番わかりやすい。Heismanの本も、この本を真似してるんじゃないかと思うぐらい、似たような記述が多い。









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