John Nunn大先生。15歳でオックスフォード大学を1530年以来の最年少で入学したという天才。数学者でもある。当然チェスも超強い。 ルーク・ポーン・エンディングをポーンの数1~8個の場合全てについて検討した本を出すほどのパラノイアレベルの完璧主義者。髪型だけピアニストのゾルタン・コチシュに似ている。))
チェスでは、パターン認識が重要だと言われる。実際、Adriaan De Grootの実験にはじまり、マスターとアマチュアの間の最大の差の一つとしてパターン(チャンク、チャンキングなどとも呼ばれる)のストック量の違いが指摘されることが多いようだ。 実験の示すところによれば、マスターは深い手を読んでベストムーブを選ぶというよりも、より多くの手を検討し、それほど深い手まで読まずに手を選択するらしい。なぜ、それが可能かということを説明する理由として、パターン認識能力が挙げられた。
チェスも同じなのだと思う。例えば、エンドゲームなどその典型ではないか。詳しくは知らないが、エンドゲームにおいても、いくつかの覚えなければならない必須のパターンというものが存在する。初めてそれらの問題を見るときは、考えて解かなければならない。しかし、一度考え方を覚えてしまうと、それらはパターンとしてストックされる。したがって、同じ状況の局面が現れたときには、思考を省略してほぼ自動で解くことができる。 何かの記事で読んだが、女性GMのアレクサンドラ・コステニュークも、100 Endgames You Must Knowをフラッシュカードにして全て一瞬で解けるようにまでしたらしい。 まるで大学受験だ(和田秀樹も、カードにして覚えるという方法を推奨していた)。
こういったパターン認識は、タクティクスやエンドゲームでは強調されるが、ストラテジーの分野ではあまり聞かないように思える。しかし、ストラテジーでも同じだと思う。それの完全体のようなものとして、ポルガー姉妹の父親のLaszlo PolgarのMiddlegamesという本がある。この本は、ストラテジーだけではなく、タクティクスも含まれているようだが、なんと4000個以上のポジションが掲載されているようだ。 確か、Studying Chess Made Easyか何かに書かれていたが、ポルガー父はいつも興味深いポジションがあると思ったらそれらを保存し、娘たちに解かせていたらしい。この本はその副産物なのかもしれない。
使いづらいという欠点はあるものの、いじっていると面白い機能がたくさんある。CHESSBASE11には、特定の対戦相手に対して準備をする機能がある。なかなかすごい機能で、大きなデータベースさえあれば(MEGADETBASE, BIG DETABASE等)、そのプレイヤーの公式試合のほぼ全てのゲームを閲覧することができる(最新ゲームは、The Week In Chessでダウンロードできる。CHESSBASE11には、TWICからゲームをダウンロードする機能がある。)。
そして、そのゲームを前提に、プレイヤーの用いるオープニング、特定のオープニングに対する戦績、オープニングの使用頻度、トーナメントでの成績、レーティング推移、顔写真、といった情報につきストーカーレベルで調べることができる。 この機能は、おそらくマスター達が相手に対してオープニングの準備をするために設けられたのだろう。
この機能自体は前から知っていたが、違う用い方もできることに気づいた。Chess.comでは、「プロフィール画面→Games→Show More(画面一番下) → ゲームタイプの選択 → Download All My Games in One PGN(画面一番下)」 という手順でchess.comでプレイした全てのゲームをプレイできる(他人のゲームも同様にダウンロード可能)。
このままだとただのpgnファイルだが、CHESSBASEでデータベースファイル(cbh)を作成し、その中に自らのゲームを入れる(pgnファイルからコピペするだけ)。 これによって、自らのゲーム集を前提としたデータベースを作れる。 そして、もちろん、このデータベースにおいても、同様に対プレイヤー準備機能を用いることができる。
(2)相手ももちろんミスをする
亀のようにblunderだけはしないと念仏のように頭で唱えていると、もちろん自分のミスは減る。そして、相手のミスにも気づきやすくなる。blunderをしないようにと考える思考過程において、相手の応手を考えるためかもしれない。一般的に、「変な手」、特に、駒を妙な場所に置く(misplace)するような手というのは、タクティクスの発生可能性が高い。(この点については、Dan Heismanの"The Seeds of Tactical Destruction"において詳しく述べられている。)
したがって、とりあえず自分はblunderをしないよう心がけ、相手がblunderをすることを待つだけでも、それなりにゲームはよくなる。ポジショナルなミスというのは、私自身にそれを追及する実力はまだないと言わざるを得ない。しかし、blunderであれば、しっかりとcalculationができたら追及できる。
Michael De La MazaがRapid Chess Improvementにおいて述べたことではないが、calculation/visualizationの力があり、タクティクスを高度の確率をもって成功させる能力があれば、ストラテジー各論の知識がほとんどなくとも、相当勝てるのだろうと思う。 もっとも、そのためには、まず自分がミスをしないことが重要だろう。